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前回、手術などで肝臓に虚血-再灌流を施した際に発生する障害を、水素ガスの吸入によって抑制する効果を期待できることを検証したラットを使った臨床試験をご紹介いたしました。この虚血-再灌流は特に急性心筋梗塞の治療に日常的に使用されているものになります。

心筋梗塞は、動脈硬化や血管内の脂肪(プラーク)などの固まりが破れ、血栓が生じることで冠動脈が詰まり、心臓に血液が流れなくなることで発症する疾患になります。「急性」心筋梗塞は発症から経過時間が3日~2週間のものが該当します。急性心筋梗塞は陳旧性心筋梗塞など慢性的な心不全へと進行しないためにも、早めの治療が求められますが、その治療時に発生する、虚血性心疾患のリスクを軽減することが課題とされています。

よって心臓における虚血-再灌流障害に水素ガスの吸引が及ぼす影響においての検証には実施の価値があるものと考えられ、この検証が実施されました。今回は、その臨床試験に関する論文をご紹介させていただこうと思います。

心筋梗塞治療時の水素ガス吸入に「虚血-再還流障害発生」の予防効果

この検証は2008年に慶應義塾大学医学部にて行われたものになります。用意されたマウス群を2グループに分け、心臓を分離し、一方の心臓にのみ水素ガスを流し込む施術を行いました。結果、水素ガスを流したマウス群については左心室機能の向上、さらには吸引した水素ガスが結紮虚血部位に速やかに運ばれ、血流の回復に利用されることで血行動態に変化が生じず、結果、左心室再構築時の障害を防ぎ、虚血―再還流による梗塞サイズの減少が確認されました。
結果、水素ガスは、冠動脈再開通に合わせて用いることで、虚血-再還流障害の発生を予防する効果を期待できるものであることが実証されました。

Inhalation of hydrogen gas reduces infarct size in the rat model of myocardial Ischemia-reperfusion injuly

この検証により、肝臓にとどまらず、心臓においても水素が虚血-再還流障害の発生予防に役立つ可能性が示唆されました。以降、このような医療の現場において水素がさらに実用されるようになることを期待したいと思います。

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